お盆を迎えて

お盆を迎えて

昔から予期せぬ大きな慶び事が起きたとき、「まるで盆と正月が一緒に来たようだ!」と表現されますようにお盆とお正月は日本人にとって一年の祭祀の中でも特に親しまれ、大切に行われてきました。
そして、お盆とお正月は家族のみならず親類縁者が大勢集まる機会でもありますことからどの家庭でもご馳走を用意し、おもてなしの準備を行っておりました。
お盆はご先祖様の精霊(みたま)を我が家にお迎え致します。
そのために準備しますのが「精霊棚(しょうりょうだな)」です。
一般的には「盆飾り」と呼ばれております。
今回は、お盆にご先祖様をお迎えするための「精霊棚」のまつり方を記してまいります。

「精霊棚」のまつり方は、各地方や地域の伝統、宗派などによって多少異なることもございますので一例としてご参照下さい。

【 精霊棚のまつり方 】

精霊棚は、ご先祖様の精霊をお迎えし供養をする壇であります。
一つづつ丁寧に準備いたしましょう。

準備しましょう

  • 小卓(テーブル)
  • オガラ(麻の茎)
  • 真菰の筵(まこものむしろ)
  • 草の縄
  • 蓮の葉、あるいは里芋の葉
  • ほおずき
  • 実や芋の出来る植物
  • ミソハギ〈水かけ草〉

お盆の頃になると花屋やスーパーなどで盆飾りセットが販売されていますので内容を確認して用意されるとよいでしょう。

作りましょう – 図1、図2参照 —

  • 茄子の馬(茄子にオガラの足をつけて馬を作ります)
  • 胡瓜の牛(胡瓜にオガラの足をつけて牛を作ります)
  • 水の子〈百味の飯食〉(茄子、胡瓜をサイの目にきざみ洗米を混ぜたものを蓮か里芋の葉っぱに乗せます)
  • 閼伽水(あかすい)〈供養の水〉(きれいな水をどんぶりに入れておきます)
  • ミソハギ〈水かけ草〉(ミソハギを束ねて半紙で巻きこよりで結びます)
  • 図1.
    茄子馬 胡瓜牛 の図
  • 図2.
    水の子、閼伽水、ミソハギ の図

精霊棚をおまつりしましょう

  • まず仏壇のお位牌や仏具を外に出し、きれいに掃除します。仏壇の中もきれいにしましょう。
  • 仏壇の前に小卓を置きその上に真菰の筵を敷き、お位牌、花瓶、香炉、灯明などを移します。
  • 季節の花、御霊供膳、季節の果物などをお供えします。
  • 茄子の馬、胡瓜の牛を置きます。
    茄子の馬はご先祖様がこの馬に乗り、少しでも早く我が家にお迎えできますように、 胡瓜の牛はお帰りになるときはゆっくりと牛歩で帰っていただくようにとの想いが込められております。
  • 水の子、閼伽水、ミソハギを置きます。

これで略式ではございますが精霊棚が整います。
正式な精霊棚を準備されます場合は、最初に用意致します小卓を次のように準備致します。

  • 正式な精霊棚 – 図3参照 —
    仏壇の前に小卓を置き小卓の足に笹や竹などを結びつけて四本柱をつくり (施餓鬼壇として正式なものは、後ろの方にもう一本立てて五本柱)竿に草縄を廻し、 それに実や芋のなる植物(ほおずき、里芋、枝豆など)を逆さにして懸けます。
    これは救倒懸苦(くとうけんく)を表しており、餓鬼道の苦しみはさながら 倒懸=「とうけん」逆さにつり下げられるような苦しみであるため、その苦しみをお盆の供養で救いたいと云う願いを表しているのです。

小卓が準備できましたら、真菰の筵を敷き略式のときと同様の手順でおまつり致します。

図3.
精霊棚の図

ご先祖様をお迎えしましょう

さて、精霊棚が整いましたらご先祖様をお迎えしましょう。
一般的にお盆は東京では七月、地方では八月の十三日から十六日の四日間行われます。
十三日の夕方、精霊棚の灯明をともし庭先(玄関先)で迎え火を焚きます。
茄子の馬を傍ら置き、オガラを燃やしますが、この火は門火(かどび)とも言い我が家に帰られるご先祖様への目印であると言われています。
迎え火が盛んになりましたらご先祖様が帰って来られたと観じ、ご家族で精霊棚の前に集まり、お線香をあげてお参りを致します。続いてお経をお唱えになりますとなお良いご供養となるでしょう。
この時からご先祖様を我が家にお迎えしたことになります。

お迎えした後は、日々心をこめてご供養致しましょう。
家族の食事の前には先ず灯明、線香をあげ家族と同じ食事を精霊棚にお供え致します。
お酒が好きだった方にはお酒を供えたり、甘いものがお好きだった方には甘味もお供えしましょう。
お参りをする時にはミソハギの束の先をどんぶりの閼伽水につけて濡らし水の子の上にふりかけます。
このことにはふた通りの意味が伝えられています。
ひとつは、閼伽水という清浄な水によって食物の汚れや穢れを洗い流す(洒水(しゃすい))の意味があり、清浄な食物をご先祖様の霊に供養するということです。
もう一つには、お施餓鬼という意味があります。施餓鬼とは餓鬼に供養(施し)をすることを云います。
成仏できず供養もされない餓鬼は、昔からお盆には供養をしてくれる者についていくと云われております。
餓鬼道に墜ちた者は、腐ったものしか喰べられずせっかくお供えした物も新しいままでは餓鬼に供養することが出来ません。
そこで水をかけてその湿り気によって少しでも早く腐らせようとするのです。
成仏できない餓鬼に対する憐憫の心をもって、仏さまの慈悲により早く成仏が出来ますようにとの祈りをこめて、餓鬼への供物(水の子の飯食)を腐らせる水をかけるのです。
自分たちのご先祖様のみならず、他も思いやるこのやさしい心こそがお盆の心髄でもあります。

ご先祖様に供養すると共にお施餓鬼もおこないましょう。

ご先祖様をお送りしましょう

早朝、ご先祖様の精霊をお送りする送り火を焚きます。
迎え火と同じ準備をし、今度は胡瓜の牛を傍らに置きます。
火がすっと消えるまでお見送りします。
これでお盆は終わりますが、仏壇から移しましたお位牌や仏具は大切に仏壇へ戻しましょう。
時は移れどお盆の期間には盆踊りがあったり、精霊流しがあったり、帰省した家族が揃い賑やかな時間を過ごし楽しい思い出がふえるものです。
ご家族揃ってご先祖様をお迎え下さい。

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